赤字でも消費税の納税が出るのはなぜか?

赤字でも消費税の納税が出るのはなぜか?

日本は黒字より赤字の法人のほうが多く、赤字の割合は7割とも8割とも言われています。
実際に我々税理士は中小企業の決算を拝見する機会が多いので
確かに顧問先の7割とはいいませんが、赤字の法人は少なくないのを実感しています。

赤字なら事業を行ってその年は利益が出なかったわけなので
あまり喜ばしいことではありません。
(今期たまたま赤字なら大丈夫ですが、何年も続くと存続の危機です)
他方、赤字なら法人税はかかりません。
「今年は業績が悪いから決算で税金はかからないな」と思っている社長さんが多いですが
赤字でも決算時に税金がかかる可能性があります。

法人税と消費税では考え方が全く違う

決算でかかる主な税金は次の2つです。
・法人税
・消費税

法人税は、法人の利益に対して課されます。
なので赤字なら前掲のように税金はかかりません。

一方、間違えやすいのが消費税です。
こちらは、法人の利益に対して課税されるものではありません。
消費税がかかる収入(課税売上)と消費税がかかる支出(課税仕入れ)がどれくらいあるのかで税額が決まります。
(厳密には他の要素もありますがほぼこの2つで決まります)

ですので消費税は利益がいくらかは関係ないので
法人税とは全く異なる計算をします。
納付する時期(決算日から2カ月以内)は同じですが
法人税と消費税は別のものと考えましょう。

赤字でも消費税の納税が出るのはなぜか

消費税は変わった税金で
税金を負担すべき人(担税者)と納付する人(納税者)が異なる税金です。
簡単に表すと
・担税者=買った人(消費者)
・納税者=売った人(事業者)
となります。

具体的に、例えば私がYカメラで15万円(税抜)のパソコンを買ったとします。
私はYカメラに15万円+消費税12,000円を支払います。
ここではパソコンを買った人である消費者(私)が消費税を負担します。
Yカメラは消費者から消費税を預かった状態になります。
この預かった消費税を一年分集計して、決算のタイミングで納付をします。

消費税はこのような仕組みなので担税者と納税者が異なるのです。

なお、Yカメラ自体が消費者になることもあります。
備品を買ったりテナント料金を払っていればそこには消費税がかかります。
ですので、消費者から預かる一方で自らも消費税を負担しています。
すでに負担した分は納付しなくて良いので
預かった消費税から負担した消費税を差し引いた差額が納付額になります。
テナント料が10万円(税抜)なら消費税は8千円かかります。
Yカメラは前掲のパソコンを売って預かった12,000円から8,000円を引いた
4,000円を納付すれば良いのです。

消費税がかかる経費とかからない経費がある

負担した消費税は納めなくて良いですが、すべての経費に消費税がかかるわけではありません。
下記は消費税がかからない一例です。

◆消費税がかからない支払いの例
・役員報酬、給与
・社会保険料や損害保険料など保険料全般
・税金全般
・減価償却費
・支払利息

なので、売上金額、経費、利益ともに同じ金額でも
その内容によって消費税の納付額は異なります。

A社    B社
売  上  10,000  10,000
役員報酬    10,000    3,000
テナント料   1,000    8,000
________________
利益     ▲1,000   ▲1,000

この場合、テナント料のみ消費税がかかる経費なので
A社の消費税は
(10,000-1,000)×8%=720
一方B社の消費税は
(10,000-8,000)×8%=160
(実際の計算方法と違いますが説明のためですのでご容赦を)

このようにどんな経費を払っているかによって消費税の納税額は異なります。
(そして赤字でも消費税の納付も生じます)

まとめ

赤字だから税金がかからないと高をくくらずに。
決算締めてみたら考えていなかった消費税があったと言うことになりかねません。
決算だけ対応の契約だとこういったことが起こり得ます。
(一年前に伝えているのですが忘れてしまうことが多いです・・・)
法人税と消費税は別のものと考えてみてはいかがでしょう。
そうすると消費税の計算方法は忘れても、納税があるか意識するようになるのではないでしょうか。